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094:釦――ぼたん――



「ぼたん?」
「そう。釦探してるんです」
制服のボタンを無くして探していた俺に、
何を探しているんだと聞いた三上先輩は、少しの間を空けた後にこう言った。
「・・・笠井も風流だな」
「え?」
ボタンを探すのの何処が風流なんだと考えてみる。
先輩達は忙しいから、ボタンを探す時間のある俺を皮肉ってるのかな、とも思ったけど、
三上先輩はそんな人じゃない。
「ぼたんだろ?」
床から視線を上げたまま固まってしまった俺は、
確認をするように聞いた先輩に向かって頷いた。
「そうです。ぼたんです」
「だったら、外で探した方がいいんじゃね?」
彼の言葉に俺は、尚も固まってしまった。
外・・・?
「や、失くしたの中だと思うんですよ。
こないだ、誠二と一緒に渋沢先輩に勉強を教えてもらいに来た時に失くしたみたいなので・・・」
俺の言葉に先輩の顔色が変わったのがわかった。
彼の顔をそうっと見る。
「あの・・・?」
「それって」
先輩と俺の声が重なる。
「それって、このボタンの事か?」
そういいながら、ボタンを留める仕草をする彼の顔は、心なしか赤かった。
「そうです」
不思議に思いながら聞いてみる。
「どうしました?」
「いや、なんでもない・・・」
そういって所在無げにする先輩は、なんだかいつもと違って見えた。
俺は、思い切って聞いてみる。
「あの、つかぬ事をお聞きしていいですか?」
「なんだよ」
ぶっきらぼうな声。
「あの・・・、さっきのボタン、えと、・・・」
先輩ににらまれて、もごもごする俺は、蛇ににらまれた蛙の心地だった。
「花」
「え?」
「だから、花だと思ってたんだよ」
顔を赤くしてぶっきらぼうにそういった先輩は、何だかいつもと違って春みたいだった。
写真とか探してるのかと思った、とゴニョゴニョ言う先輩はなんだか小さく見えた。
「探しに行きません?」
先輩は変な顔をした。
「探すって、何をだよ」
「牡丹の花」
俺は嬉しくなって駆け出したくなった。


ある日の午後の、お話。


―――――――――あとがき。

私はこのお題を見たとき、間違えました。
牡丹と、ボタン。
字を良く見ればわかるのに、
牡丹として考えてました。
それはもう、妖艶な話を。(おい
牡丹の話はいつか書くかも。
希望があれば、ですけど。


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