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075:ひとでなしの恋



すれ違った。
街中で。
あなたと。


      □


「笠井呼んで」
お昼休み。
三上先輩が笠井君を迎えに来た。
「笠井君、笠井君」
彼を、揺り起こす。
「んー・・・」
彼の眠そうな声を聞くと、寝かしてあげたくなるけれど、
三上先輩が呼んでるのだからと、かわいそうだけれど尚も揺さぶった。
「笠井君」
ようやく、彼の猫目が薄く開いた。
「三上先輩が、呼んでるよ」
にっこり微笑んで、教えてあげる。
私は、普段笑ったりしないけど、彼には誠意を込めて笑いかける。
そう、誠意を込めて。
誠意なんて言葉は、とっくに忘れた。
大昔に。
笠井君は、眠そうにしていたけれど、私の言葉を聞いた途端、ガバッと跳ね起きた。
そして、私の顔を見た。
もう一度、繰り返す。
「三上先輩が呼んでるよ」
「え、・・・ホント?!」
寝起きで少し掠れた声。
彼の少し出始めた白い喉仏を見て、息苦しくなる。
触りたい気持ちを抑えて、彼の猫目を見て微笑む。
「三上先輩、そこで待ってるよ」
教室の入り口を指差した。
入り口では三上先輩が私に向かって会釈した。
「ありがとう!」
笠井君が私の側をすり抜けて、入り口へと走っていった。
風を受けて、髪がなびいた。
あとに残った、彼の匂い。


私は窓際にたって、己の腕を軽く抱いた。

彼に恋人が、男の恋人がいるという噂が流れたのは
それからやや経ってからのことだった。
白い、喉仏。
彼の、残り香。
初夏の、できごと。


―――――――――あとがき。

やや女の子視点のおはなし。
こういうのに挑戦するのもいいかなーと思い立って書いた作品。
やはり文章力の欠如。
が、問題。

話の主旨としては、
女の子が竹己を好き。
竹己には恋人がいて。
竹己は同性愛をしていて。
というお話。
彼女は報われません。
・・・で。
どこが「人でなし」なのかというと。
彼女の視線(狂おしい、というか、なんというか)が「人でなし」なわけです。
以上。



20030822 up。                     


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