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041:デリカテッセン


日曜。
新宿。
人が沢山流れてる。
ひじきの煮物。
かにクリームコロッケ。
・・・惣菜屋。
・・・・・・デリカテッセン。

「ホントに不景気なんですかね」
店の外を流れる人の波を見ながら、俺はつぶやく。
「まあ、数字にはそう出てるけどな」
俺の言葉につられるように外を見て、マリネを選んでいた三上先輩が答える。

夏休み半ば。
三上先輩からお誘いが掛かった。
「竹己。俺ン家来いよ」
俺に断る理由も無い。
「・・・いいですよ」
そして今日がその日だ。
新宿南口で10時に待ち合わせをした。
三上先輩は、いつも俺より早く来る。
何分前ぐらいに来てるのか知りたくて、俺も早く行ってみるけど、
その度に勝てたことは無い。
今日だって、朝から霧雨が降ってるのに、先輩は待っていた。
・・・メガネをかけて。
メガネなんか、めったにかけたこと無いのに、今日はかけていた。
心臓が、コポコポと音を立てる。
おい、静まれったら、俺の心臓!
そんな思いを無視するかのように心臓はますます悲鳴を上げる。
顔がカーッと熱くなる。
先輩が、こっちをみる。
俺を見つける。
「・・・――た?」
口がパクパクするのが見えるけど、何を言っているのかわからない。
「――した?」
頭をコツっとされた。
「・・・え?あ、すすすみません!」
ぷっ。
ぷ?なんの音?
見ると、目の前の三上先輩が吹きだしている。
えええ!なななんで!
俺があわてていると、こらえきれなくなったみたいに笑い出した。
俺の頭をぽんっと叩きながら、笑う。
俺は、膨れて見せた。
「もー、なんでわらうんですかぁ!」
ぷく、と膨れた俺の頬を長い指でつつく。
「かわいいなー、おまえv」
可愛いなんて言われたって・・・!
ますます膨れる俺の手を引っ張る三上先輩。
わっ!ちょ、待って!!
俺は、先輩にしがみつく。
ちょっと嫌な顔されるかな、って思ったけど、渋沢先輩みたいにふわっとした笑顔を浮かべてくれた。
俺、満足vv
余計にしがみついてみる。
「やめてくれぇー!」
そんな照れた笑顔で拒否っても、ムダですよ、先輩vv
ニコニコしてしがみつく。
「おまえ、ねじ拾って来い。来る時はずしてきたろ」
失礼な!そんなこと無いです!
そのまま南口からでて、タワレコの前を通って、In The Roomの交差点を曲がって、東口に出る。
俺はしがみついてるけど、段々疲れてきて手をはずす。
人ごみにのまれそうになって、戸惑う。
俺のほうに伸びてくる先輩の手。
「?」
「つかまれよ。迷子になるぞ」
差し出された手につかまって、歩く。
少し、歩きやすくなった。


「ここだ」

先輩が言う。

「東口で待ち合わせすれば良かったんじゃ・・・」

俺が言うと、先輩は俺の頭をくしゃっとなでる。

「猫毛みてえだな。・・・ながく、居たかったからだよ」

ドキドキが、とまらない。

入った惣菜屋では、色々と出来合いのものが置いてある。
結構、好きかも。
「うわぁ!いっぱい置いてありますねー!
あ、俺、あれ好きです。おいしんですよねー。あ、これも!」
目を輝かす俺に、先輩が一言。
「・・・たくみ。そんなに買えない」
全部買って欲しいなんて思ってないんだけどなー、とか思いながら先輩をみつめる。
「お前、全部食いそうなんだもん」
「・・・っ!そんなに食い意地張ってるように見えますかぁ?」
もうっと膨れる俺に、先輩の声が。
「楽譜見てるときみたいな顔してたから」
また、ドキドキする俺の心臓。
デリカエッセンで、BGMにクラッシックが流れるのを聞きながら、俺達は見つめあう。
「・・・先輩と半々で好きなものを買いましょう」
「おっし。わかった」
先輩がマリネを選ぶその後ろ姿を見ながら、恋ってこんなんだっけと思う俺。
いや、違うような・・・。
顔が、上気する――。

「ホントに不景気なんですかね」
店の外を流れる人の波を見ながら、俺はつぶやく。
「まあ、数字にはそう出てるけどな」
俺の言葉につられるように外を見て、マリネを選んでいた三上先輩が答える。
買った惣菜を持って、外に出る。手をつないで。
最近の、午後の過ごし方。



――――――――――あとがき。

うぅわぁ〜!
竹己が!!おとめだ!!
なんか、恋する乙女モードです。
恋するタクチャン、好きです。
20030712 up。

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