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022:MD





MDをききながら、電車に乗る。
左と右からあふれ出る音に挟まれて、俺は夢うつつの心地になる。
現実か幻か。
愛しい人に包み込まれることを夢見て、今日も揺られる。
あなたが、好きでした。


連絡が取れなくなってから、どのくらい経つのか。
それさえも思い出せない遠い過去に、思いを馳せる。
思い浮かぶのは、あなたの思い出ばかりで、俺は、まだあなたを忘れていないらしいことを知る。
思わずボタンを押した携帯電話は切ないほどに頼りなくて。
こんなにも話せないことが辛いなんて思わなかった。
離れていた時間が、役に立たないことを知る。
忘れるのに時間なんてさして関係ないことを知る。
ピアノを奏でる時、あなたとの優しい時間を思い出して、切なくなる。
廊下ですれ違う時、きゅっと痛くなる胸の痛みを覚えて、逃げ出したくなる。
あなたを知って、愛して……きっと、俺は気付くのが遅すぎたに違いない。


MDをききながら、電車に乗る。
左と右からあふれ出る音に挟まれて、俺は夢うつつの心地になる。
現実か幻か。
せめて、いっそ夢の中にいられたなら……。
遠い過去に身をゆだねることができたなら……。
愛しい人に包み込まれることを夢見て、今日も揺られる。



―――――――――あとがき。

へた、っすねー。
20031020 up。
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